小松重男 蚤とり侍

小松重男さんの蚤とり侍を読みました。

 

ストーリーは「猫の蚤とりになって無様に暮らせ!」

主君の逆鱗に触れた長岡藩士・小林寛之進は、

猫の蚤とり―実は“淫売夫”に身を落とす。

下賎な生業と考えていた寛之進だが、次第に世に有用な、

むしろ崇高な仕事だと確信する。

ところが政権が変わり、蚤とり稼業が禁止に。

禁令の撤廃を願い出る寛之進だが…。(表題作)

江戸の浮き世を懸命に生きた愛すべき人々の物語、全六編。

 

蚤とり侍

唐傘一本

一世一代

鰈の縁側

代金百枚

年金奉公

 

映画化ということで興味を持ち手に取りました。

長編小説だと思ったら短編集だったのでちょっと拍子抜けでした。

江戸時代の様々な職業が出てきますが、

今では考えられないような仕事が沢山ありユニークな時代でも

あったのかなと思いました。

時代小説なので少し読みづらいかと思いましたが、

べらんめえ口調があったり、言い回しが古風だったりして

独特な表現があって多少分かりずらいところもありましたが

思っていたよりも読みやすかったです。

 

近年になりやっと女性が社会進出してきて

男女が平等になりつつと思っていましたが、

ここに登場する女性は今の時代の女性よりも

鼻っぱしが強くて、男性も丸め込んでしまう潔さがあり

吃驚してしまいます。

こうゆう女性が粋な女性なのかもしれないですが、

その相手の夫になる人達は肩身が狭い思いをしているので

少し可哀想な気もしました。

どの時代にもこのような人がいるかと思いますが、

夫に隠れず堂々と色恋沙汰をしているのには驚きです。

 

それぞれの短編にはオチがついて面白くてクスクスと

笑えるものもありますが、「年季奉公」はそんな事がなく

悲しい結末でこうゆう庶民の人の方が多いのかなと

想像してしまいました。

 

たまにはこのような時代小説で現実からとことん離れた時代を

楽しみながら読んでみるのも良いかと思いました。

個人的にはもう少し現代言葉で書かれていると

読みやすいですが。

 

この作品では短編だったので

映画では阿部寛さん、豊川悦司さんがどのように長編として

演ずるのかとても気になるので何かの機会があったら観てみたいです。

 

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2018.07.11 Wednesday | 読書19:50comments(0) | - | by yumi

湊かなえ 未来

湊かなえさんの未来を読みました。

 

ストーリーは「こんにちは、章子。

わたしは20年後のあなたです」ある日、

突然届いた一通の手紙。 送り主は未来の自分だという……。

『告白』から10年、湊ワーールドの集大成!

待望の書き下ろし長編ミステリー!!

 

告白からの10年で湊さんの集大成ということもあり、

未来というタイトルでもあったので今までのテイストとは違ったり、

明るい未来が見えたりするのかと想像して読んでいましたが

読み進めていうちにどんどんと重くなり途中ではとても

読むにはきついなと思う箇所がありました。

けれど初めの未来から突然届いた手紙からラストに

辿り着くには予想外な展開に驚かされてしまいました。

 

章子の視点から描かれている子供の頃の手紙の部分は、

子供ということもあり漢字が少なく平仮名が多いので

少し読みづらかったです。

 

章子の視点の他にも様々な子供の視点から

エピソードが描かれていますが、

貧困、いじめ、DV問題、近親相姦、AV強要詐欺、放火などと

現代社会にも問題になっていることが様々盛り込まれていますが

これを読んでいるだけでも辛くてやるせない気持ちになってきます。

その反対にと大人って何だろうという気持ちにさせられます。

大人が招いたことなのに何故子供達がこんな目に遭わなければ

いけないのだろうというと思います。

 

けれどどの子供達もいつか幸せが来ることを望みながら、

自分が出来ることだけを必死に生きている所が

せめてもの救いのあるところだったと思います。

 

大人によって苦しんでいることがあったのならば、

助けを求めること。

本文中にあった

世の中にはちゃんと話を聞いてくれる大人がいるんでしょう?

日本中からこれだけの人たちが集まってきているんだよ。

子どもが多いけれど、ちゃんと大人もいる。

心から訴えれば、誰かが耳を傾けてくれると思わない?

これがこの作品の中では一番言い伝えたいことだった

のではないかと思えました。

 

湊さんの作品はイヤミス感がある作品が多いですが、

今回もその要素が沢山ありますが、

少しだけラストに希望の光が見えたので

今回は少しすっきりした気持ちになれました。

 

ミステリーとしてはエピソードの部分から伏線が

あちこちに散りばめられていて、

ラストに大どんでん返しがあり、

またやられてしまったなという湊ワールドは健在の作品でした。

 

 

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2018.07.04 Wednesday | 読書18:10comments(0) | - | by yumi

森沢明夫 キッチン風見鶏

森沢明夫さんのキッチン風見鶏を読みました。

 

ストーリーは港町で三代続く老舗洋食屋「キッチン風見鶏」。

おすすめは、じっくりと手をかけた熟成肉料理だ。

漫画家デビューを夢見るウエイター・坂田翔平は、幽霊が見えてしまうのが悩みのタネ。

お客さん一人ひとりに合わせた料理が好評な

オーナーシェフ・鳥居絵里は、家族の健康を案じつつ

空元気を出して奮闘中!

誰しも未来は不安だし、人生は寂しいものだ。

でも、だからこそ、自分の心に嘘をつかずに生きていく―。

美味しさとやさしさが溢れる傑作長編。

 

プロローグ

第一章 和牛の熟成肉

第二章 なんでも餃子

第三章 国産レモンのクリームパスタ

第四章 約束のカレー エピローグ

 

キッチン風見鶏を舞台にして5人の登場人物の

人間模様が描かれています。

今まで森沢さんの作品が好きで何冊か読んでいますが、

幽霊が見えたり特異な霊能力を持ち合わせるといった

登場人物というのは無かったので少し風変りな感じでした。

けれどファンタジーな世界感と現実の世界感の

融合が独特な世界観を味わうことが出来ました。

 

森沢さんの作品には時々過去の作品が登場されますが、

今回は「きらきら眼鏡」が登場していたので

またここで宝箱を探し当てたようで嬉しいです。

 

どの主人公にも表の顔からでは分からない辛い過去からの悩み、

人生の悩みなどがあり、そこで一人悲しみ、もがいて

本当に人というのは人それぞれの人生で

精一杯生きているのだと思いました。

特に祐子の悩みは切実で時間が許されなく、どう抗いても解決するのは

難しいであろうかということなのに、他人が心配するよりも

本人の方が淡々としてかえって本質を見定めているような気がして

生きる覚悟をしているという気迫を感じられました。

 

キッチン風見鶏で美味しい食事をすることで、

人の心を癒し、人との交わりも豊かにして本当に良い場所で

こんなお店があったら是非行ってみたいです。

 

翔平と寿々は若者らしさの悩みに苦しみながらも、

二人の距離が段々と近くなり偶然の沢山の重なりが

また心の距離が近くなり、その光景がとても微笑ましかったです。

また絵里と洋一とは大人ならではのそれぞれの悩みに苦しみながらも、

二人の距離が遠いのか近いのかスレスレな距離がもどかしかったですが、

ラストには思い切りの良かった展開になりほろりとさせられました。

絵里には洋一のことだけでなく祐子のこともあり、

この悩みはとても切実で二人だけの会話は涙無くては読めなかったです。

特に第三章の約束のカレーの中の絵里と祐子が寝ながら

話ている会話は涙をこらえるのに必死でした。

母親の優しさと温かみというのを改めて思い出し、

有難さを感じてしまいました。

 

いつも森沢さんの作品の中には素敵な言葉がありますが、

今回も散りばめられていました。

 人生に「正解」なんてないんだよ。

 自分で選んだ道を自分の道の努力で「正解」にするんだ。

 

 自分の心に嘘をつかずに人生を創っていけばいいよ

 

 人生にマイナスと思わる出来事が降りかかったてきたなら、

 心の中で「だからこそ」という魔法の言葉を発してみること。

 

今回も美味しいメニューと優しい言葉が沢山散りばめられていて、

心が温かくなり癒されました。

人生を歩いている時に悩み立ち止まることもあっても

魔法の言葉を使うことによって気持ちまで変えてくれるので

この作品もそんな時に再読したくなる作品だと思います。

明日からも少し頑張ってみようかと思えて

心も優しくなれる作品だとも思うのでお勧めです。

 

 

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2018.06.26 Tuesday | 読書17:15comments(0) | - | by yumi

原田マハ 奇跡の人

原田マハさんの奇跡の人を読みました。

 

ストーリーはアメリカ留学帰りの去場安のもとに、伊藤博文から手紙が届いた。

「盲目で、耳が聞こえず、口も利けない少女」が青森県弘前の名家にいるという。

明治二十年、教育係として招かれた安はその少女、介良れんに出会った。

使用人たちに「けものの子」のように扱われ、

暗い蔵に閉じ込められていたが、

れんは強烈な光を放っていた。

彼女に眠っている才能を開花させるため、二人の長い闘いが始まった―。

著者渾身の感動傑作!

 

ヘレンケラーとサリヴァン先生の物語が

明治時代の津軽が舞台になっていて、

日本版のヘレンケラーの物語として展開されていってます。

序章の部分ではどこか古めかしい文体とお国訛りが

あったので 少し読みずらさを感じましたが、

物語が展開されていくうちに

安が三重苦のれんに対する思い入れ、

この人を人として支えてあげたいという

気持ちが素晴らしく、 引き込まれてしまいました。

このお国訛りが人間臭さが出ていてリアル感が出ていて良かったです。

れんを通して安自身の不安な事も拭うように

熱心に教えている姿は本当に素晴らしいです。

 

人は一つ失ったものがあったとしても

それを他のことで補う素晴らしさがある。

何も出来ないというのではなく、

何かを探して、それを導く安の人に対しての

献身的な熱心さにも感服しました。

 

安の提案によってれんにはキワという特別な友達が出来て、

これによって身も心も解き放れて才能が開花されかと思います。

人生の中でこの時期が一番良かったのかと思わされます。

そしてラストにはお互いの長年の夢であったことが

実現されて、お互いに共鳴していたところは

本当に涙をそそられます。

 

安とキワという特別な人との出会いの中であったからこそ

ここまでのれんにもなったと思いますが、れんの努力もさながら、

そして周りにいつもいた女中さんのくったくのない優しさ、

いつでも無性の愛で娘の事を案じていた母親の支えもあったからこそ

ここまでのれんになれたのかと思い、

女性の力が全てここに集約されているように思えました。

 

幼少の頃に読んだヘレンケラーよりも、

この作品の方がより身近に感じインパクトがとても強く

生きる強さをより感じ心が震えました。

 

この作品では安とれんを通して障碍者差別、女性差別問題、

そして日本古来の家族制度、社会制度が盛り込まれていて

人としてどう生きていくかということを教えられ、

絶望の淵からでも希望を持って強く生きる力をもらえた作品でした。

 

原田さんの作品には心が温まり、癒され、

そして次なるスップへの希望の光を持つことが出来て

いつも感動してしまいます。

今回もまた感動させられてしまいました。

どんな作品でも無駄のない作品で本当に凄いです。

 

 

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2018.06.21 Thursday | 読書15:51comments(0) | - | by yumi

東野圭吾 パラレルワールド・ラブストーリー

東野圭吾さんのパパラレルワールド・ラブストーリーを読みました。

 

ストーリーは 親友の恋人を手に入れるために、

俺はいったい何をしたのだろうか。

「本当の過去」を取り戻すため、「記憶」と「真実」のはざまを辿る敦賀崇史。

錯綜する世界の向こうに潜む闇、1つの疑問が、さらなる謎を生む。

精緻な伏線、意表をつく展開、ついに解き明かされる驚愕の真実とは!?

傑作長編ミステリー。

 

映画が公開されるというので手に取りました。

 

タイトルにもあるようにパラレルワールドということなので、

自分の頭の中までパラレルワールドのようになってしまい、

何度かこれは前に読んだことのあるような?

という感覚に囚われて時にはデジャブーではないかとも

思ってしまいそれだけ上手くパラレルな世界を

味わうことが出来ました。

 

それにしても一つの開発研究をきっかけに

一人の女性を巡って大事な友情や親友、恋人が翻弄されてしまい

最終的には自分の好都合で嫌な記憶を消し去ってしまうというのは

人としてはあまり良い気はしませんでした。

 

作品中にあったように

「嫌なこと、悲しいこと、辛いことを経験したことによる心の痛みを、

 全て忘れるという方法で解決して良いものだろうか。

 むしろ人間はそうした心の痛みを、

 一生抱えて生きていくべきではないのか。」

いくら科学や医学が発達をして最良な身体や頭脳を持ったとしても

やはり大切なのは人間らしく心があるということであり、

人の痛みや悲しみが分かる人間でいなければならないということを

感じてしまいました。

そうなると、嫌なこと、悲しいことの経験も

いつかは生きていく上での肥やしになると思えて

少しは苦しみからも逃れられるような気持ちにもなれるのかとも

思えてしまいました。

 

東野さんの作品は好きなので色々と読んできましたが、

こんなにはっきりとした恋愛関係が描かれた作品は

他ではあまり見られなかったような気がして新鮮でした。

主人公の記憶が過去に戻ったり色々な時空に飛んでいくので、

頭の中の整理をするのが大変な所もありましたが、

それが更にストーリーの面白さに加わっていき読み出したら

ページを捲る手が止まらないスリルさがありました。

この作品のアイデアが生まれたのが20代で、

小説化にしたのは30代というのですが古めかしい所も無く

斬新な作品で時代を問わない作品だと思いました。

 

これがどのように映像化されたのか興味があるので、

機会があったら映画も観てみたいと思います。

 

 


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2018.06.13 Wednesday | 読書17:25comments(0) | - | by yumi

是枝裕和 万引き家族

是枝裕和さんの万引き家族を読みました。

 

内容

第41回日本アカデミー賞にて最優秀作品賞をはじめ6冠を獲得した。

『三度目の殺人』の是枝裕和監督が最新作「万引き家族」を自ら小説化。

是枝監督が小説で描き出す、「家族の絆」とは―――。

「彼らが盗んだものは、絆でした」 とある住宅街。

柴田治と息子の祥太は、スーパーや駄菓子店で日々万引きをして生計をたてていた。

ある日、治はじゅりという少女が家から閉め出されているのを見かねて連れて帰ってくる。

驚く妻の信代だったが、少女の家庭事情を案じ、

一緒に「家族」として暮らすことに。

年金で細々と生きる祖母の初枝、JK見学店で働く信代の妹・亜紀。6人家族として幸せに暮らしていた。

しかし、ある出来事を境に、彼らの抱える 「秘密」が明らかになっていく―――。

 

パルムドール受賞作ということなので手に取りました。

 

タイトル通りに万引きをして生計を成りたてていた家族の事が描かれています。

けれどこの家族が読み進めていくうちにただの家族ではないということが

徐々に浮かび上がっていくたびに驚きます。

これに至るまでには治と信代の過去があらわになり、

これもまた信じられないような過去が。

様々な事情のある過去が入り混じり、

つぎはぎだらけのような家族だけれど、

それぞれの家族の絆はどこの家族の絆よりも強いように思えました。

 

信代が語った「子供を生めばだれでも母親になれるのか?」

という問いにはこの作品以外でもよくテーマになりますが、

子供を生めば自然に母親になれるというのは当たり前ではなく、

子供を育てながら母親らしくなっていくというものだと思います。

だからこそこの作品のように信代はじゅりと祥太を我が子のように

育てられたのだと思います。

子供に対しての愛情がこのように深くなったのも、

自分の母親への呪縛もあったからこんな行動になったと思い

可哀想だと思えました。

 

治と信代のしたことは法律的に言えば決して良い事ではありません。

けれど一つ一つの状況から判断すると、

虐待されていた子供を救ったり、居場所のない少女を救ったりと

その人達にとっては良い事だと思えます。

例え家族という形をとっていたとしても、

その子供の居場所が良い環境と言えなければ

家族という形の意味はどうなるのでしょうか。

 

とかく法律上や血縁関係だけの家族という形が

クローズアップされがちですが本当の家族の

ありかたというのはどうゆうものなのか、

そしてつながりとは一体どうゆうものなのか

というのを考えさせられました。

 

万引き、虐待、不正年金受給などと重いテーマがあり、

普段なかなか目に留まらないことにも盛り込まれいて、

一筋縄では解決できないような問題もあり

多方面から考えさせられる作品でした。

 

ラストの治と祥太のやり取りは涙無くしては読めないです。

 

この作品は是枝監督が映画のノベライズ本として書かれてるので、

普通の小説と比べると少し情景描写が乏しいところがありますが、

読みやすいので、映画と照らし合わせてみると

更に分かりやすいかと思います。

 

この本を読んだら益々映画が観たくなってしまいました。

機会があったら是非観てみたいと思います。

 

 

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2018.06.06 Wednesday | 読書23:31comments(0) | - | by yumi

辻村深月 鍵のない夢を見る

辻村深月さんの鍵のない夢を見るを読みました。

 

ストーリーは第147回直木賞受賞作! !
わたしたちの心にさしこむ影と、ひと筋の希望の光を描く傑作短編集。

5編収録。

「仁志野町の泥棒」誰も家に鍵をかけないような平和で

閉鎖的な町にやって来た転校生の母親には千円、

二千円をかすめる盗癖があり……。

「石蕗南地区の放火」田舎で婚期を逃した女の焦りと、

いい年をして青年団のやり甲斐にしがみ付く男の見栄が交錯する。

「美弥谷団地の逃亡者」ご近所出会い系サイトで出会った彼氏との

リゾート地への逃避行の末に待つ、取り返しのつかないある事実。

「芹葉大学の夢と殺人」【推理作家協会賞短編部門候補作】

大学で出会い、霞のような夢ばかり語る男。

でも別れる決定的な理由もないから一緒にいる。

そんな関係を成就するために彼女が選んだ唯一の手段とは。

「君本家の誘拐」念願の赤ちゃんだけど、どうして私ばかり大変なの?

一瞬の心の隙をついてベビーカーは消えた。

 

日常の何気ない生活の一部を女性の視点で描いた短編集でしたが、

タイトルで「夢を見る」とあったので晴れ晴れとした気分で

終える内容かと思っていたら特に何か解決するものでもなく、

もやもやだったり、時には後から背筋がぞっとするようなものだったりと

様々な思いのする作品でした。

 

女性が女性を陥れるタイプの人、

今期を逃している女性の焦りと

いい歳をしてある事に遣り甲斐を感じて見栄を張る男性。

そう言えばこのように似ている人がいるなと思えてしまい、

似顔絵も特にないのに顔が想像できてしまう感じのリアルさでした。

どちらにしても人としては心が狭く、醜さが見え隠れしていて

あまり近づきたくない人物でした。

 

「美祢谷団地の逃亡者」からの三篇はまるでニュースにでも

なるような事件といってもいいようなストーリーで

読んでいて展開が気になりぐっと引き込まれました。

ご近所出会い系サイトで知り合った男性と付き合い出したのは良いですが、

どこととなく会話と行動を読み取ってみても心が無くて、

本当にこの人は何を考えているのだろと思ってしまいました。

そして徐々にその本性が表れて気が付いた時には

とんでもない事をしでかしていて、下手していたらこの女性も

どうにかなってしまったのかと思うとこれは現実的にもありそうで

ぞっとするような怖さでした。

 

そして「芹場大学の夢と殺人」に登場する男性もある意味

怖い人物でした。

いつまでも自分の夢を追い続ける男性。

夢を持ち続けることは大切ですが、

この男性の場合は夢を追い続けているのではなく、

自分の世界を崩したくない、思い通りにならないことはしないなどと

筋の通らないことがこじつけられているので、

こんな人と付き合っていたら頭がどうかなりそうな気がします。

それに嵌ってしまった女性が最後には自分を犠牲にして

知らせることになったラストには驚愕でした。

この主人公の彼女はこうなることが希望だったのか・・・

ちょっと無念のように思えてなりませんでした。

 

ラストの「君本家の誘拐」は子供を生んだことのある人ならば

同じような思いをする人が多いと思いますが、

未経験の自分でもこの閉鎖的な空間の中でのドキドキ感が

伝わり読んでいても緊迫感がたまりませんでした。

こんなに子育てというのは普遍的で孤独感が多いのかと思うと

世の中の子育てをしている人達は本当に凄いと思ってしまい、

これからはより社会で温かい目と温かい手を差し伸べて

あげなければいけないと思えました。

 

どの作品もドキドキ感は味わえるので、

日常のスリル感を味わってみたい方にはお勧めかと思います。

 

辻村さんは描写が細かく描かれているので、

読んでいてもまるで目の前にその人がいるかのように見えたり、

心理描写も細かいのでリアル感が伝わるので

読んでいて面白くてページをめくる手が止まらなくなります。

辻村さんの作品はまだ数えるほどしか読んでいないので、

このようなタイプは初めてだったのでとても新鮮でした。

これをきっかけに色々な作品に触れてみたいと思います。

 

 

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2018.06.01 Friday | 読書23:20comments(0) | - | by yumi

薬丸岳 友罪

薬丸岳さんの友罪を読みました。

 

ストーリーは あなたは“その過去”を知っても友達でいられますか?

埼玉の小さな町工場に就職した益田は、同日に入社した鈴木と出会う。

無口で陰のある鈴木だったが、同い年の二人は次第に打ち解けてゆく。

しかし、あるとき益田は、鈴木が十四年前、

連続児童殺傷で日本中を震え上がらせた「黒蛇神事件」の犯人ではないかと疑惑を抱くようになり―。

少年犯罪のその後を描いた、著者渾身の長編小説。

 

映画化が公開になるというので手に取りました。

 

自分の友人が殺人犯だったらというとても難しく重いテーマでした。

加害者側それを取り巻く家族、

それを支える医療少年院いた頃のサポートチームの教師などの

視点でも描かれています。

とかく一般的には遺族側からの視点で描かれることが多いですが、

これは視点が違うのでそれだけでも印象深くて遺族側と同様にして

生きていくことに対しての苦悩が伝わります。

 

加害者が少年ということで教護院などでたとえ更生したとしても、

いくら過去の罪を背負って生きてたとしても、

周りからはそう見られることが無く過ごしていると見えてしまう。

いくら償っても償い切れない現実から逃れられなく、

そして過去の過ちから逃れられることがない鈴木の様子を見ていると

とても苦しい気持ちになりました。

けれど遺族側の立場から見てみれば

こんなことは当然の事だと思ってしまう。

両者の心情を考えるととても安易に答えを

出すには難しいと思ってしまいました。

 

そして加害者が友達と思った人に打ち明けらるのも苦しく、

それを知ってしまった恋人、職場の一部の人達は

どうやって加害者と共に接して生きていけば良いのかと

とても考えさせられました。

もし自分であったらと思うととても想像できないです。

 

益田のとった行動は少し迂闊な部分もありましたが、

最後の手記は加害者にとって救われる思いと

贖罪の思いも重なり両者にとって未来のある手記で

寄り添い心のある言葉であり心に沁みました。

またここでも加害者にとってメディアの在り方も

どうかと考えさせられました。

ただ真実だけを伝えるだけで良いのか。

それとも人として伝えるべきなのか・・・

 

重いテーマのストーリーですが、

飽きることなくそれどころかストーリーにぐいぐいと引き込まれて

一気に読んでしまいました。

結論は各々の考え方で違うと思いますが、

益田の手記でもあったように

二度と同じ過ちを繰り返さないで、

自分の罪と被害者やその家族への償いの気持ちを深めながら、

人間として強く生きていって欲しいという気持ちが

更に強く思えました。

 

最近は凶悪事件や理不尽な殺人事件など人を簡単に

傷つけてしまうような事件が多くなってしまった時代なので

こんな時こそこのような作品を多くの人達に読んで

心を揺さぶらせてもらえたらと思います。

男女、世代を問わずに読める作品なのでお勧めです。

 

薬丸さんの作品はだいぶ前にも読んで印象的でしたが、

また今回の作品でも考えさせられ、

心揺さぶられることなど沢山あったので

また他の作品も読んでみたいと思います。

 

映画は生田斗真、瑛太と「64〜ロクヨン〜」の瀬々敬久監督なので

どのように描かれているのか機会があったら観てみたいです。

 

 

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2018.05.29 Tuesday | 読書18:07comments(0) | - | by yumi

村山由佳 ダブル・ファンタジー(下)

村山由佳さんのダブル・ファンタジー(下)を読みました。

 

ストーリーは志澤とのかつてないセックスを経験した奈津は、

テレビの取材で訪れた香港で、大学時代の先輩・岩井と久しぶりに出会う。

夫とも、志澤とも異なる、友情にも似た岩井との性的関係は、彼女をさらなる境地へと導く。

抑圧を解放した女性が、官能の果てで見たものは?作家・村山由佳が

新境地を切り開いた金字塔的小説。

 

こんなにも何度も際どい性描写がある作品は

今まであまり読んだことがないので、

段々と飽きが出てしまって官能小説という風には味わえませんでした。

 

やはり奈津の恋愛体質な性格というか体質が災いをして

仕事の為という枠組みを超えてしまっだけにしか思えなかったです。

けれど女性の身体は子供を生むだけのモノではなく、

その真髄もはっきりと書かれた部分もあったので

少しは共感出来る部分もありました。

ラストの

 なんて、さびしい。

 どこまでも自由であるとは、

 こんなにもさびしいことだったのか・・・・・。

という言葉がとても印象的でこの言葉に

奈津は集約されるかと思いました。

 

奈津の特殊な恋愛体質にはちょっとついていけないですが、

こうゆう女性も世の中にいるのだと思うと、

女性というのは難しく奥深い生き物なんだとも思えたりします。

 

上巻では夫の子供っぽさが露呈していた所など気になりましたが、

下巻では夫のことがさほど気にならなくなり、

ちょっと可哀想な気がしてしまいました。

奈津みたいな女性では夫がいくら普通の仕事をして

普通の生活に戻ったとしても元に戻ることは難しいのかと思いました。

結局仕事も恋愛も夫とも特に変わることなく、

ラストがあっさりとしてしまったので少し物足りなさを感じました。

 

以前村山さんの作品を何冊か読んだことがありますが、

それとはだいぶ違いイメージが崩れたので意外性はありました。

自由奔放な女性に憧れるという人もいるかと思いますが、

とても奈津のような自由さにはついていけないです。

ある意味自由奔放の究極がこんな形になるのかと思えます。

女性の自由奔放さに揺さぶられてみたい方は

読んでみると面白いかと思います。

 

 

wowowで映像化になり水川あさみさんが主演を演じるということですが、

難しい役をどのように描かれるのか気になるところです。

 

 

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2018.05.24 Thursday | 読書23:03comments(0) | - | by yumi

村山由佳 ダブル・ファンタジー(上)

村山由佳さんのダブル・ファンタジー(上)を読みました。

 

ストーリーは三十五歳の脚本家、奈津は、才能に恵まれながら、

田舎で同居する夫の抑圧に苦しんでいた。

ある日、夫の創作への関与に耐えられなくなった奈津は、

長く敬愛していた演出家・志澤の意見に従い、家を飛び出す決意をする。

束縛から解き放たれた女性が、初めてめぐり合う生と性、

その彷徨の行方を正面から描く衝撃的な官能の物語。

 

wowowで放映されるので手に取りました。

 

本のレビューやあらすじを少し目を通してから本を読んだので

ある程度の覚悟はしていましたが、

かなりきわどい性描写が沢山出てくるので

吃驚してしまいました。

それを男性ではなく、女性がこれだけ事細かく描いたものを

読んだのは初めてなので更にインパクトがありました。

けれど官能的とまではあまり思えないのは

奈津が意外と大胆な性格なせいなのかと思えました。

 

主人公の奈津は脚本家であるために仕事のために

よりリアル感を味わうために様々な衝撃的な事を

経験していたかのように思えましたが、

敬愛していた人に出会ってしまってからはそれが違う方へと

向かってしまったのでこれはどのような心境の変化かと

思ってしまいます。

二人のやり取りを見ていると、師弟関係を通り越して

不倫のようなものにも思えてきてしまいました。

いわゆるこれが俗によく言う、

一人の男によって変えられてしまったというか、

閉じられていた扉が開かれてしまったとでも言いましょうか。

それとも元々の楽な方へ楽な方へと流れてしまう性格が災いを

招いてしまったのでしょうか。

 

それに対して夫との関係はまるで兄弟や同級生といったような関係で

これもまた少し違和感のあるような気もしました。

自分だけの小さな世界だけを好んでいるというのもちょっと幼稚というか

子供っぽさがあると思えてしまい夫とというより、

人としてどうなのかと思ってしまいました。

後半の夫との諍いでは結局仕事がらみのことが中心になり

ちょっと夫が可哀想な気もしましたが、

奈津のような上の世界を目指している人には

物足りなさを感じてしまうのかと思えてしまいました。

 

下巻は奈津が脚本家としてひと花咲かすのか、

そしてこれからの男女関係、

夫婦関係などがどうなっていくのか

そして人としてどう成長していくのかが楽しみです。

 

 

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2018.05.21 Monday | 読書14:42comments(0) | - | by yumi