東野圭吾 虚ろな十字架

東野圭吾さんの『虚ろな十字架』を読みました。

 

ストーリーは別れた妻が殺された。

もし、あのとき離婚していなければ、

私はまた遺族になるところだった。

東野圭吾にしか書けない圧倒的な密度と、

深い思索に裏付けられた予想もつかない展開。

私たちはまた、答えの出ない問いに立ち尽くす。

 

被害者の遺族にとっては例え死刑と判決が出たとしても、

ただの通過点にすぎず、

被害者が二度と返って来ることのない心の痛み。

それをどこにぶつけて良いのかとても苦しみます。

とはいっても死刑と下されなくても終身刑でも罪を償うために

毎日刑務所の中で生きていると思うと矛盾する気持ちも分かります。

どんな判決が出るにせよこの作品によって

死刑制度ということを考えさせられました。

罪を犯した時の償い方とはいったいどうしたら良いものかと

頭を悩まされこれは永遠のテーマかとも思います。

 

この作品では死刑制度についての答えは

東野さんとしては導いていないですが、

このような作品を描かれたことのよって読者をはじめとして

多くの人にこの問題を投げかけているかとも思うので

そこからまた生まれる何かがあるかとも思えました。

一番良いのは罪を犯さないことが一番良いことなのですが。

 

重いテーマを扱っていますが一つの事件から意外な方向へと広がり、

複雑に絡み合った人間関係で構成されていて

とても読み応えのある作品でした。

ミステリー小説というよりもやや社会派な部分も楽しめました。

 

以前読んだ「手紙」の作品で犯罪加害者の家族の事を少し思い出し、

家族の絆や罪を償うということも重ね合わせながら

この作品も読み、このような難しい作品も東野さんは上手いなと思いました。

 

 

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2017.06.23 Friday | 読書23:31comments(0) | - | by yumi

短編少年 伊坂 幸太郎,あさの あつこ他

伊坂 幸太郎,あさの あつこ,佐川 光晴,朝井 リョウ,柳 広司,奥田 英朗,山崎 ナオコーラ,小川 糸,石田 衣良
集英社
(2017-05-19)

短編少年』を読みました。

 

ストーリーは人気作家の贅沢な競演。

少年をテーマに綴られた短編作品9編を収録したアンソロジー。

 

逆ソクラテス 伊坂幸太郎

下野原光一くんについて あさのあつこ

四本のラケット 佐川光晴

ひからない蛍 朝井リョウ

すーぱー・すたじあむ 柳広司

夏のアルバム 奥田英朗

正直な子ども 山崎ナオコーラ

僕の太陽 小川糸

跳ぶ少年 石田衣良

 

今人気の作家さんが少年をテーマにした

短編作品のアンソロジーということで、

どれもそれぞれに個性が出ていて、

少年をあらゆる角度から描かれていて楽しめました。

 

どの作品に共通していえることだと思うのですが、

少年はどれも青春の甘酸っぱさが出ていて清々しく思えました。

女性は幼い頃から既に独特な世界があるので、

余計に少年の方が爽やかさが残ったのが印象的でした。

 

特に印象的だった作品は「逆ソクラテス」、

「四本のラケット」、「夏のアルバム」、「僕の太陽」でした。

 

少年をまるでその側で見ているかのような心境になったり、

心が揺らいでくじけそうになっている時には

思わず励ましたくなったりと学生時代にタイムスリップしたみたいに

きゅんとした心にもなれました。

 

「夏のアルバム」ではストーリーが少し深刻だった

ということもありますが、少年だけでなく、

一緒にいる子ども達がとてもいじらしい気持ちが

繊細に描かれていたので読み終えた時には涙がこぼれそうな切なく

悲しい気持ちで一杯になりました。

この夏の出来事がきっとこの少年は一生忘れられないのだろうかとも思えました。

 

クラスに一人はいそうな男子、少年に出会えた気がして

様々な気持ちにさせられました。

また懐かしい幼い記憶と並行しながら読めるので、

楽しく青春の一ページをめくったような思いにもなれたので

こうゆう短編集も良いなと思います。

 

読んだことのない作家の作品もここで読めたので、

これをきっかけに他の作品も読んでみたくなりました。

どの作品も読みやすいので男女問わず、

世代を問わずに読めるのでお勧めだと思います。

 

 

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2017.06.16 Friday | 読書19:13comments(0) | - | by yumi

荻原浩 幸せになる百通りの方法

荻原浩さんの『幸せになる百通りの方法』を読みました。

 

ストーリーはオレオレ詐欺の片棒担ぎ、突然歴女化した恋人、

成功法にこだわる青年……

この時代を滑稽に、でも懸命に生きる人々を描く七つの短篇。

 

原発がともなす灯の下で

俺だよ、俺。

今日もみんなつながっている。

出逢いのジャングル

ベンチマン

歴史がいっぱい

幸せになる百通りの方法 の七つの短編

 

どれも最後に軽いオチがあり思わずくすりと笑えてしまって

楽しく読むことができて幸せなひと時でした。

 

誰にでもある普通の日常生活の中から

苦い経験や面白い経験などが綴られているので

とても庶民的な笑いで親近感が得られ、

心がやんわりと温まりながらも

少し皮ったところもあってその塩梅も良かったです。

 

どれも面白くて一つ一つが鮮明に思い出されますが、

「俺だよ、俺。」、「今日もみんなつながるっている。」、

「出逢いのジャングル」、「ベンチマン」が強く印象に残っています。

ベンチマンの最後は清々しい気持ちにもなって、

明日から頑張ってみようという気持ちにさせられます。

 

タイトルだけと見ると自己啓発本のように思われますが、

そんなことは全然なく気軽に読めて、

読んだ後には心がなんだかほっこりとした気持ちになるので

心が疲れた方にはお勧めな作品だと思います。

またゆっくりと再読してみたいと思います。

 

荻原さんの作品が好きで何冊か読んでいますが、

サスペンスからサラリーマンを主人公にしたエンターテイメント小説、

そして家族を中心にした家族小説や人生小説などで幅広いですが、

そのどれも満足のいく作品ばかりで本当にはずれが無いです。

これからの活躍も期待して色々な作品を読みたいと思います。

 

 

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2017.06.10 Saturday | 読書22:14comments(0) | - | by yumi

小川糸 こんな夜は

小川糸さんの『こんな夜は』を読みました。

 

スローリーは古いアパートを借りて、ベルリンに2カ月暮らしてみました。

土曜日は青空マーケットで野菜を調達し、日曜日には蚤の市におでかけ。

窓の外から聞こえるストリートの演奏をBGMに、

読書をしながらお茶を飲んだり、さくらんぼのジャムをことこと煮たり。

ベルリンの街と人々が教えてくれた、

お金をかけず楽しく暮らす日々を綴った大人気日記エッセイ。

 

2011年当時の日本での出来事とベルリンでアパートに暮らした日々の事が綴られています。

今回も丁寧な暮らしぶりやスローライフ、

スローフードについて書かれていて

とても真似ができるとは思いませんが、

少しは見習いたかったり参考にしてみたい所もありました。

 

ベルリンでの生活では以前書かれたヨーロッパの旅行記とはまた違い

一歩生活に密接したドイツの歴史、ドイツ人の質実剛健さと

ドイツ人の根底に流れている魂のようなものを感じられました。

今の日本があるのもドイツのお蔭でもあるのも知り、

まだドイツのあらゆる精神を日本でも受け入れられたら良い思いました。

 

今回は2011年で3月11日の東日本大震災当時の事が書かれていて、

震災当時の事を思い出し、あれから何が日本では変わったのだろうかと

改めて考えてしまいました。

ここで述べられているように電力、原子力などについては

一時的には変わったようにも思えましたが

休止していた原発では再稼働を始めたり、

復興という名前ばかりで人の心の復興はまだまだだと思われます。

 

そしてベルリンで生活していた時に訪れたユダヤ博物館、

ホロコーストの事が書かれていて、現地で味わうことしか出来ない

生々しい歴史の現実をうかがい知ることが出来ました。

ドイツ人はきちんと過去を清算して忘れないように

努力しているなと思いました。

二度と同じ事の過ちを繰り返さないようにと願ったのに、

大きな戦争は無いにしても今の世界情勢は危ういです。

この二つの事に関しては次世代に受け継がなければらないと思うので、

いつまでも関心を持たなくてはいけないと思いました。

 

文中ものもあった

実際に旅に出られなくても、

本の中を自由に旅することができる

まさにこの作品でもドイツという国を旅することが出来て

改めてまた本の良さを分かり得た気がします。

 

日記エッセイはこれで2作品目ですが、

ゆっくりと何も考えずに楽しめることが出来るので

また読みたいと思います。

 

 

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2017.06.07 Wednesday | 読書21:21comments(0) | - | by yumi

角田光代 森に眠る魚

角田光代さんの『森に眠る魚』を読みました。

 

ストーリーは東京の文教地区の町で出会った5人の母親。

育児を通してしだいに心を許しあうが、

いつしかその関係性は変容していた。

あの子さえいなければ。私さえいなければ…。

凄みある筆致であぶりだした、現代に生きる母親たちの深い孤独と痛み。

衝撃の母子小説。

 

以前角田さんの作品で読んだ「坂の途中の家」や「ひそやかな花園」と

同じようなママ友を中心とした内容なのかと思いましたが、

途中で解説に文京区幼女殺人事件をモチーフに描かれている

というのを知り考え深く読みました。

 

前半までは5人のママ友達がそれぞれの個性はあるものの

分け隔てなく楽しく過ごしているかのように見えて

一瞬羨ましい関係のようにも思えました。

ところがある一人の男の子の小学校受験をきっかけに

それまで関心のなかったママ友達に異変が起き始める。

そして受験だけでなく一人が妊娠したことによっても異変が起きはじめ

徐々にグループ内の関係が崩れはじめます。

楽しいママ友がいっぺんにして互いに比較したり、探り合ったり、

憎しみあったりしてここまでも関係が崩壊していくのかと

思ってしまいました。

互いに比較して嫉妬の塊になっていき、

しまいには自分で自分を苦しめてしまっている状態になり

後半部分でのお祭りに行く女性の怪しい行動には狂気を感じ、

女性の心理描写があまりにも鬼気迫る思いがして

読んでいて苦しかったです。

 

女性は物心ついた時から男性にはない独特の世界があり、

それは学生時代だけのことだと思っていましたが、

大人になってもいつの世代になっても抜けることはなく、

それによって人間関係が難しいと思わざるおえなくなってしまいます。

この中のママ友達も学生の時に苦い経験があるからこそ、

また同じような経験はしたくないからそこそこの付き合いをと

思っていたと思っていましたが、結局はまた同じようなことを

繰り返されてしまったというのはやりきれなさを感じます。

他人と比べると人は不要は不幸を背負いこむ。

人は人、自分は自分、その線引きをしっかりさせて

日々を送りたいと思っていても

ママ友となると自分だけではなく子供を交えての交際となると

難しいのだなと思いました。

 

角田さんは以前の作品でも女性の心理描写やママ友達の会話が

とても細かく表現されていて、特に今回も会話の部分では

とてもリアルでまるでどこかの立場端でも聞いているかのような

リアル感で吸い込まれました。

 

登場人物のどの女性もそれぞれの過去に辛い過去があったり、

今もなお人には言いたくても言えない悩みがあったりしても、

ママ友の前に出ると明るく気丈に逞しくふるまってしまい

それが余計にいらないトラブルの火種になってしまうのかとも思ったりしました。

誰が悪いとかそうゆうことではなく、

とにかく人と比べることでこんなにも苦しく辛くなってしまう

人間関係というのは嫌だなと思っていまいました。

 

核家族で少子化という昨今で同じ年頃の子どもを持つ主婦は

同じような境遇の人と出逢えたらどれだけ心強いものかと思います。

けれどせっかくのママ友も些細な事からどこかボタンを掛け違いで

こんなドロドロとした人間関係になってしまって、

親同士だけでなく子供まで嫌な思いをさせてしまうのは

残念なことだと思います。

 

私は子供がいないのでママ友付き合いという経験が無いですが、

時にはそんな関係が羨ましくも思ったりもしましたが、

このような事に巻き込まれしまうとしたら

そんな経験をしなくて良かったのかなとも思えたり、

女性の独特な世界感を改めて難しいなと思わされてしまいました。

けれど自分の価値観と合ったり心地良い人と出会えることも

あると思うので、そのような場合にはママ友という枠を超えて

人生の友になれるかと思います。

 

アメトークの「読書芸人」で紹介されて話題になった作品なので

手に取ってみましたが、読みやすく現代の女性の心を鷲掴みしていて

女性の日頃に対する本音も細かく描かれているかと思います。

女性の心の深い闇を知るには読み応えがありお勧めな作品かと思います。

 


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2017.06.05 Monday | 読書15:30comments(0) | - | by yumi

益田ミリ 前進する日もしない日も

益田ミリさんの『前進する日もしない日も』を読みました。

 

ストーリーは着付け教室に通ったり、旅行に出かけたり、引っ越ししたり。

仕事もお金も人間関係も自分なりにやりくりできるようになった

30代後半から40歳にかけての日々。

完全に「大人」のエリアに踏み入れたけれど、

それでも時に泣きたくなることもあれば、

怒りに震える日だってある。

悲喜交々を、きらりと光る言葉で丁寧に描く共感度一二〇%のエッセイ集。

 

今回は30代後半から40歳にかけの

日々の暮らしをエッセイにしたものなので

あらゆるジャンルで幅広く色々な場面で楽しめました。

 

益田さんとは同じ世代なので共感をする所が多々あり、

自分だけでは無い共通な考え方や想いなどがあったので安心しました。

 

特に大人という文字が入っている章が印象的で、

後半部分の生きるということもなかなか深みのある言葉が

あって好きです。

 

毒舌まではいかないですが、そのギリギリ具合に砕けた感じに

書かれていて、程よくゆるさと苦さのようなものが

入り混じって何も考えずにさらりと読めるところが良いです。

 

エッセイも良かったですが、

その間にある大きな文字で書かれてあるひと言も好きで

ついそこだけを先に読んでしまうこともありました。

 

歳を重ねていくということは思い悩むこともあるけれど、

時にはゆっくりと立ち止まってみたり、

またはまだできることがあるかもしれないという希望を

持ち合わせたりしながらまた前に歩んでいくものだなとも思いました。

 

益田さんの十年後にまた今と同じ気持ちで

出会えたら良いなと思いました。

 

 

すーさんシリーズを読んで嵌り、

その他の作品も何冊か読んでいますが

これからもまったりしたい時、心が元気でない時などには

益田さんの作品を読もうと思います。

 

 

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2017.05.31 Wednesday | 読書19:02comments(0) | - | by yumi

北川恵海 ちょっと今から仕事やめてくる

北川恵海さんの『ちょっと今から仕事やめてくる』を読みました。

 

 ストーリーは ブラック企業にこき使われて心身共に衰弱した隆は、

無意識に線路に飛び込もうしたところを「ヤマモト」と名乗る男に助けられた。

同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けてもらう隆だが、

本物の同級生は海外滞在中ということがわかる。

なぜ赤の他人をここまで?気になった隆は、

彼の名前で個人情報をネット検索するが、

出てきたのは、三年前に激務で自殺した男のニュースだった―。

スカっとできて最後は泣ける、第21回電撃小説大賞“メディアワークス文庫賞”受賞作。

 

映画の公開をするというので興味を持ち手に取りました。

 

よくありがちなストーリーだと思いながら読んでいましたが、

心身共に衰弱していた隆の所に大阪弁のヤマモトが

タイミングよく出てきてテンポの良い会話のやり取りなどを

読んでいると楽しい気分になりました。

 

ヤマモトの「お前の人生は何のためにあると思う?

 人生は誰のためにあると思う?」というふとした言葉。

これから隆同様に人生というものを改めて見つめ直すことができ、

本当に大切なものは何かということを考えうことが出来ます。

 

中盤から人生について色々と考えさせられることがありますが、

隆と両親との電話での会話の一言一言には胸が詰まる思いがしました。

本当に大事な事を教えてくれて

心の支えとなるのはやはり両親からで

とにかく人生なんて生きていればいいことがある。

というこの一言に尽きるかと思いました。

 

そして後半では隆の行動と発言ががらりと変わり、

生き生きとしているのがとても爽快でした。

特に後半の隆の力説やメモの部分は

若い方や働いる方に読んでもらえると共感できることと思います。

 

働く人なら誰でも共感できると思いますが、

働いていない人でも人生を歩いていく上で

大事な言葉があります。

働いていく上で煮詰まってしまった人、

人生に少し躓いてしまった人

そんな時にこの作品を読んだら明日への活力になるかと思います。

テンポがよくて読みやすいのでお勧めです。

 

 

これが北川さんの本としても作品のデビュー作なので

これからの活躍もまた期待したいと思います。

 

映画も2017年5月27日から公開になっており、

機会があったら観てみたいです。

 

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2017.05.30 Tuesday | 読書21:49comments(0) | - | by yumi

柴崎友香 春の庭

柴崎友香さんの『春の庭』を読みました。

 

ストーリーは東京・世田谷の取り壊し間近のアパートに住む太郎は、住人の女と知り合う。

彼女は隣に建つ「水色の家」に、異様な関心を示していた。

街に積み重なる時間の中で、彼らが見つけたものとは―

第151回芥川賞に輝く表題作に、「糸」「見えない」「出かける準備」の

三篇を加え、作家の揺るぎない才能を示した小説集。

 

芥川賞受賞作ということで柴崎さんの作品を初めて手に取りました。

「春の庭」は水色の家を中心にそれを好きな人とアパートの住人との

日々の日常生活模様が淡々と描かれていています。

読解力の不足なのか想像力が乏しいのか

何が伝えたいのかよく分からず、心に響くものがなく、

頭にも特に残ることなく終わってしまいました。

ただいくら身内の物の形見と思っても

太郎がすり鉢と乳鉢をいつまでも持っていたのが薄気味悪かったです。

主人公の太郎が途中でわたしになったり、

視点も太郎から違う人へと変わったりと

一人称から二人称になったりと変化するので少しややこしかったです。

それが文章のトリックなのかとも思いましたが。

 

「糸」、「見えない」、「出かける準備」も

ある建物を中心としてそれを取り巻く人々の日常が描かれていましたが、

情景は事細かく描かれているので想像しやすいのですが、

人の心情や行動などがあまり描かれていないので

心にピンと伝わるものが無かったです。

 

つい何かが始まる気配があるとこれから何かが起きるのかと思い

それを期待しながら読み進めますがそれが無く淡々と過ぎていく。

こんな感じが現実の日常というものかとも思いました。

 

何とか理解しようと同じ個所を何度か読み返してみたりしたのですが、

あまり伝わるものがなくて、まるで国語の教科書でも

読んでいるかのようで肌にあまり合わなかったようでした。

このような独特な世界感が芥川賞それとも純文学というものかとも思えました。

 

柴崎さんの作品は他にもまだあるので、他の作品を読んでみたら

また印象も変わるかと思うのでその機会を楽しみにしたいと思います。

 

 

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2017.05.28 Sunday | 読書23:32comments(0) | - | by yumi

森絵都 みかづき

森絵都さんの『みかづき』を読みました。

 

ストーリーは「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」 昭和36年。

人生を教えることに捧げた、塾教師たちの物語が始まる。

胸を打つ確かな感動。著者5年ぶり、渾身の大長編。

小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、

赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。

女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。

ベビーブームと経済成長を背景に、 塾も順調に成長してゆくが、

予期せぬ波瀾がふたりを襲い――。

 

日本の教育の在り方、学習塾の遍歴、義務教育の歴史など

学校教育と学習塾を対比しながら様々な方面から書かれていて

とてもよく分かりました。

 

それと並行して女系家族を主軸とした家族の物語、

塾の経営者としての奮闘が絡み合い家族と教育に対しての

テーマが踏ふんだん盛り込まれた作品だと思いました。

 

特に塾の創設にあたった千明は教育ということに関して、

人生をかけたといっても過言ではない行動には度肝を抜かれます。

教育ということに関しては誰にも負けず、

誰よりも優れていたのは本当に素晴らしいことだと思います。

けれどこれに振り回されてしまった娘たちは可哀想な気もしましたが、

後々のことを見てみると子供は親の背中を見て育つとは

よく言ったものでそれぞれの個性を持ちながら

立派に大人になっていったので良かったなと思います。

 

人生の節目などを太陽と月のなぞえられて、

そして月の満ち欠けに例えたりしてロマンチックだと思えたり、

その一方ではとても深い意味だったりしてこの本のタイトルに

まさに相応しいと思いました。

 

常に何かが欠けている三日月。

教育も自分と同様、そのようなものでもあるのかもしれない。

欠けている自覚があればこそ、人は満ちよう、

満ちようと研鑽を積むのかもしれない

 

この言葉がとても印象的で

これでこの作品の全てを語っているかと思いました。

 

理想の教育を志していた作品ですが、格差社会、

シングルマザーから生まれる貧困問題などと現代の日本が

大きく抱えている社会問題にも切り込んでいたので

考えさせられることもありました。

教育を通して社会全体の在り方も問われているようでした。

 

教育をテーマにした作品なので初めは硬い印象がありましたが、

読み進めていくうちに登場人物がとても生き生きとしていて

時にはくすりと笑える一コマがあり、人間味がとてもあるので

テンポよく読めて読みがいのある作品だと思います。

 

教育に携わる方には多く読まれたら良いなと思います。

 

 

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2017.05.26 Friday | 読書12:54comments(0) | - | by yumi

原田マハ あなたは、誰かの大切な人

原田マハさんの『あなたは、誰かの大切な人』を読みました。

 

ストーリーは 勤務先の美術館に宅配便が届く。

差出人はひと月前、孤独のうちに他界した父。

つまらない人間と妻には疎まれても、

娘の進路を密かに理解していた父の最後のメッセージとは……(「無用の人」)。

歳を重ねて寂しさと不安を感じる独身女性が、

かけがえのない人に気が付いたときの温かい気持ちを描く珠玉の六編。

 

最後の伝言 Save the Last Dance for Me

月夜のアボカド A Gift from Ester´s Kitchen

無用の人 Birthday Surprise

緑陰のマナ Manna in the Green Shadow

波打ち際のふたり A Day on the Spring Beach

皿の上の孤独 Barragan´s Solitude

 

どの作品も人生の半ばにさしかかった独身女性が様々な別れに遭遇し、

その時の気持ちを切なくも温かく描かれた作品でした。

 

「最後の伝言」では父が典型的な髪結い亭主だったけれど、

それにもめげずに父の事を想いながら母の女としての想いが

最後まで込められていてくすりと笑えながらも

思わず涙が出そうになったり、

夫婦というのは外側からでは分からないというのがよく分かります。

こんな一途な母の想いがとても可愛らしくもありこんな女性にも憧れました。

 

「月夜のアボカド」の中の何気ない台詞がとても心に響きます。

いちばんの幸福は、家族でも、恋人でも、

友だちでも、自分が好きな人と一緒に過ごす、ってことじゃないかしら。

大好きな人と、食事で向かい合って、おいしい食事をともにする。

笑ってしまうほど単純で、かけがえのない、ささやかなこと。

高価なものがあったり、沢山の物に囲まれていても

やはり一番大事な人と食事をするというのが

どんなに人生の中で最高に幸せなんだと思わされました。

そしてその大事な食事で幸せをいかに充実させるかということもあり

大事な要素でもあると思いました。

 

「皿の上の孤独」は前半では元同僚のことばかり語っていたので

あまり主人公の女性のことは気になっていませんでしたが、

この女性も過去に大きな辛いことが幾度とあり、

お互いにそれを乗り越えてこの今という瞬間を生きてきているというのが

とても励まされました。

今日を生きた、だから明日も生きようという気持ち。

普通の人から見ていると何でもないことに思える日常でも、

困難な事を乗り越えている人から見るとこんな思いをしていながら

生きていると思うと共感せざるおえない気持ちになりました。

 

この作品では美術や建築物などの芸術に関することが出ていたので、

あまり馴染みがなかったのでそれがかえって新鮮で興味深かったです。

海外での話も多かったのでその光景が浮かぶのも良かったです。

 

どんなに辛く悲しいことでも誰かが必ずそばにいる。

そばにいる人が大切であるように、

自分もその人にとっては大切な人であるということに気付かされたり、

人は一人では生きていないということを改めて教えられた気がします。

 

原田さんの作品は何冊か読んでいますが、

さらりと読めてその中にジーンとくる言葉がくっきりと表れて

いつも心を清々しくさせてくます。

この作品でも同じくほんのりと心の中に温かい灯をともしてくれてました。

これから更に歳を重ねる上で大切な事を教えてくれた一冊でした。

 

 

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2017.05.19 Friday | 読書23:25comments(0) | - | by yumi